あたらしい映画の形。SAMANSAはショート映画を通し、映像業界の未来を拓く

Sagano

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こんにちは、&Fans編集部の嵯峨野です。&Fans では、熱狂を生むさまざまな企業や個人のストーリーや、それらの考えに紐づくマーケティング概念などを紹介しています。

今回はショート映画に特化した、独自のVODサービスとして注目を集めている「SAMANSA」の代表取締役である岩永さんに話を伺いました。

映画の新しい可能性を切り拓くサービスとして、「忙しい現代人のライフスタイルにフィットする」「見たことのない短編映画が集まる」という強みを活かし、国内外でユーザーを増やし続けるSAMANSA。その背景には、映像業界への情熱とファンを惹きつけるユニークな戦略がありました。

目次

既存の映画業界・映画市場の延長にはないアプローチをとっていくこと

ーまず、「SAMANSA」について簡単にご紹介いただけますか。

上映時間が短い映画=ショート映画に限定して配信しているVOD*サービスです。

NetflixやU-NEXTさんなどのVODサービスはご存じの方が多いかと思いますが、 短い映画に限って配信してるのは、弊社のみになります。現在は月額490円で視聴可能です。

VOD*:VOD(ビデオ・オン・デマンド)は、インターネットやケーブルテレビ、衛星放送などのネットワークを通じて、映画やドラマ、アニメなどの動画コンテンツを視聴できるサービス。

ーなぜあえてショート映画だけに絞っているのでしょうか。

TikTokが2017年ぐらいから急激に普及していた中で、映画でも短い作品が注目を浴びる世界がやってきそうだと、その当時から感じていました。また、私自身がアメリカの映画学校を出ており、自分自身もショート映画を作ったり、世の中に面白いショートの映像作品があることは知っていたんですね。じゃあ面白い作品を集めて見られる場所をつくれば、見てもらえるんじゃないかと。

あと、日本人って忙しいかたが多いですよね。隙間時間に短い映画を見る体験が、現代のライフスタイルにフィットしていると考え、サービスをスタートしました。

ー現在はどれくらいの登録者がいらっしゃるのでしょうか。

ユーザーは4万5000人超えてきて、配信本数は約700本です。基本有料プランのみですが、1週間の無料トライアルでの視聴も可能です。

2023年末から海外進出をし始めていて、直近だとアメリカ向けに5月から始めました。現在は韓国、タイ、インドネシア、アメリカ向けに多言語対応をしています。

「SAMANSA」:https://www.samansa.com/

ー新卒の時はリクルートにいらっしゃったんですよね。

はい、リクルートで営業をやっていてその後映像系のスタートアップを経て、アメリカに留学をしました。

ーアメリカに行こう、そしてそこで映画を勉強しようと思われた経緯は?

曽祖父が地元で映画の配給と映画館の興行をやっていたんですよね。そのため子供の頃からチャップリンのビデオや西部劇の映画など、名作に囲まれた生活環境でした。それらを見て育ったことで映画が好きになりました。

また、学生時代にバックパッカーでさまざまな国を回った経験もあったのですが、社会人を経験し、改めて映画を学びに行くならアメリカだと。そこで、自分の好きな映像・映画について学ぶことにしました。

ー(曽祖父が映画配給と興行をやられてたなんて、ある種、映画のサラブレッドだ……!)
留学後、SAMANSAの前に別の会社を立ち上げたと伺いました。

はい、帰国後最初は映像制作の会社を立ち上げました。

ー映像制作会社というとクリエイター寄りになると思うのですが、現在では他のクリエイターが作った作品を配信するという、クリエイターをサポート側に回ったきっかけはあるのでしょうか。

コロナ禍の前までは、日本とアメリカを行き来しながら映像を作っていました。アメリカのクリエイターは割と「俺ハリウッドにいるぜ」「これから夢を叶えるぞ」みたいなモチベーションで制作に臨んでいたのですが、一方日本では、「予算も安いし、機会もあんまりないし、ここではいいもの作れないよね」というようなムードでして……

同じ業界なのに強くギャップを感じました。

ー日本は夢がないというか、何だか寂しい話ですね。

そうなんです。そこで、日本の映画業界を変える・良くしていくには、既存の映画業界・映画市場の延長にはない別のアプローチが必要だと考えました。

では何をしようか?先に話したようにTikTokなどが盛り上がっている背景に加え、日本でショート映画がまだまだ認知度が低いこともあったので、これから伸びていきそうだなと注目したのです。

真冬の夜、街中で出会った男女。一夜限りの関係を持つため、女は男の家に向かうことに。でも、彼の家は都心から約3時間も離れていた…。そんな、長い道のりの先に待っていた二人の運命とは。

ビクトリア朝のある家族が特別な力を一人ずつ披露していくが……

作品・クリエイターファーストを貫くことで、ファンからの信頼を得ていく

ーSAMANSAさんは配信サービス以外にも、youtubeでの番組や最近だと航空会社とのコラボ、 映画館での上映など、様々なチャネルで積極的に活動していますが、ファン(登録者)が熱狂している理由、価値を感じているものは何だと思いますか。

やっぱりまず1つは”短い”ということ。もう1つは、他で見れない作品群を集めているということだと思います。もしSAMANSAの作品が他の配信サービスにあったらわざわざ登録する必要ないと思うので、それは大きな価値になってると思います。

あとは、SNSを通して「見たい」とか「続きが気になる」という感覚を若い世代のかたに提示できてることでしょうか。SNSでバズった作品は、プラットフォーム上でも1番再生数が伸びています。

ー配信しているクリエイターへの利益還元の話も興味深いです。

ありがとうございます。ただ、最近は前金で一律版権料として1年間の契約料をお支払いする形が多いです。サービスを始めた当初は再生数に応じてレベニューシェアしてたのですが、そうすると再生されない作品は全く利益を還元できなくなってしまう状況が起きてしまうので。まだ一部レベニューシェアをしてるクリエイターさんもいます!

ーファンとのコミュニケーション、ブランドとしてのあり方や世界観など、どういったことにこだわっているのでしょうか。

ファンというより、クリエイターファーストを大事にしていて、ありがたいことにそれがお客さんにも伝わってるかなという印象です。私たちは「世の中にまだ出てきてないけど才能のあるクリエイター・面白い作品を積極的に発掘していくこと」はブレずに続けてきています。ファンのかたがたはそんな姿勢に共感いただけているのかと。

”今年見た映画で一番面白かった映画”がショート映画になる世界を目指して

ーお話を伺っているうちにSAMANSAではどんなかたたちが働いているのか気になってきました……!働いているかたはどんなミッションを持って働いているのでしょうか。

答えになるかわからないですが、それぞれ自由に動いているかと思います。自分自身が人から言われることが嫌いなタイプなので、人にはあんまり言いたくないんです(笑)

会社としてミッション・ビジョン・バリューは提示しているものの、スタートアップでありますし、会社に縛られず自由に動いてもらいたいという思いがあります。

ー&Fans を運営する rayout もスタートアップではあるので、その考えはとてもわかります。

生産性といったことも意識しすぎて仕事がつまんなくなったら嫌だなと思うので、そこも個人に任せています。

ー生産性を求めすぎない結果みんなが楽しく仕事できる、だからこそ逆説的に仕事の結果も出る、みたいな感じでしょうか。

そうですね、そのためなるべく映画が好きな人を採用するようにしています。その軸があればちゃんとビジョンに則ってやってもらえると考えています。映画業界という、日本では決して成長産業とは言えない業界で働くには「映画好きで好きで仕方がない」、「業界を変えたい」などという強い意志を持つことがやっぱり必要なのかなと。

ーサービスとして今後どのような展開をされ、どのようなゴールを描いていますか。

抽象的な話では、今年何の映画が面白かったか?と聞いた時、多くの方が『ゴジラ-1.0』など有名なタイトルを挙げることが多い現状ですが、そのタイトル名がショート映画になるような世界を作るということを1つ掲げています。

また、既にSAMANSAが世界で1番視聴されているショート映画のサービスですが、 そのポジションを維持しつつ全世界に広げていきたいです。

ー皆が選ぶ、今年の映画!的なものにショート映画が選ばれる未来は熱い話です。

あとは、映像・映画業界に限らず、クリエイターや表現者の支援をやりたいと考えています。例えば、NIKEやレッドブルがスポーツ選手のスポンサーになっているじゃないですか。それらの表現者版をやりたいと今個人的に思ってますね。

また、リアルな場での取り組みで言うと、日本の各地にある空き家を活用して映画館にするなど「エシカルやSDGsの文脈×映画」で何かやりたいと思っています。

今年の11月8日に開催された、国内最大級のスタートアップカンファレンス B Dash Camp 2024 Fall in Fukuoka 内のピッチコンテスト「Pitch Arena」にて 株式会社SAMANSA は優勝をおさめた。

ーこれからの展望に関して、話が尽きないですね!それらって既に実現の兆しが見えるものはあるのでしょうか。

まだ具体的にプロジェクトとして走り出していないですが、最近も地方の方からある相談がありました。街によっては、映画を観たくても片道3時間ほどかけて近くのイオンなどに行かないと映画が観れないというような場所があります。そこにSAMANSAが作品だけ提供して、公民館などで観れるような機会を作るなど、そういったことに貢献していきたいという強い思いがあります。

とにかく映像業界、そして日本に貢献したいっていう気持ちで今はSAMANSAを運営しています。

ー映像業界の中でもどんな形で貢献するか?それが小さい頃から人生を通してキーワードになっていた映画だったということですね。

そうですね、自分の中で1番好きでやりたいことが映画だったので、映画を通して貢献できたらと今は考えています。

ー創業前の話から今後の展望まで、本日はさまざまな話をしていただきありがとうございました!

取材を終えて

vodサービス初、ショート動画に特化した「SAMANSA」。

Instagramでオススメとして流れてくる切り抜き動画を高頻度で拝見していた為、取材に応じていただく前から SAMANSA は知っておりました。

私自身も動画は1.5倍速が常で、興味がないと3分以上の動画が観れないほど“タイパ“に犯されている世代ですが、そんな中でショート映画という新しい様式は革命的でした。

余談ですが、この取材を経て実際にサービスの利用を始めたらめちゃくちゃハマってしまい、昼休憩中やお風呂上がりの保湿タイムに15分程度で終わる映画を毎日のように観ています笑

たった数分なのにストーリーは濃密で、2時間映画を観た後のような満足感を得ることができる「SAMANSA」のショート映画は、“タイパ“重視の現代人に非常にマッチしていると感じます。

せわしない日々を過ごしている世界中の人に声を大にしてオススメしたいサービスです。

取材: rayout 嵯峨野
編集:神谷周作

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