ピーティックスが生み出すつながりと新しい世界の扉─ファンと共に創る、さらなる発展と可能性

Matsui

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こんにちは、&Fansライターのマツイです。&Fansでは、熱狂を生む企業や個人のストーリー、それらの考えに紐づくマーケティング概念などを紹介しています。

新しい趣味を見つけたい、同じ興味を持つ仲間と出会いたい。そんな願いを叶える、日本最大級のイベント・コミュニティサービス「ピーティックス (Peatix)」。

「出会いと体験を広げる」をミッションに掲げ、多種多様なイベントをサポートしています。2011年のサービス開始から利用者数は増加する一方。現在では年間イベント参加者数が520万人を超え、世界22カ国で利用されています。 

イベント主催者と参加者をつなぐ一大プラットフォームが、どのようにファンマーケティングを展開し、支持を得ているのか。Peatix Japan株式会社の最高マーケティング責任者である、藤田祐司さんにお話を伺いました。

目次

ピーティックスの成り立ちとサービスの成長軌跡。逆境を乗り越え、広がるイベントの可能性

―本日はよろしくお願いいたします。サイトを拝見し、個人のイベントから大規模なセミナーまで、さまざまなイベントが掲載されているのに驚きました。現在は何件のイベントが掲載されているのですか?

常時2万件以上のイベントが掲載されています。ビジネスにエンタメ、ライフスタイルと大きく分けて3つのジャンルがありますが、基本的にはオールジャンル。勉強会やセミナー、フェス、趣味の集まりなどにご利用いただいています。

 「ピーティックス ( Peatix )」https://peatix.com/

―ピーティックスはイベントの主催者と、それに興味がある人をつなぐ一大プラットフォームとして活躍しています。サービス開始からの成長の軌跡をおしえてください。

サービスの開発は2010年秋に始まり、2011年5月にリリースしました。しかし、直前に東日本大震災が発生。多くのイベントが自粛され、サービス開始時には開催イベントがほとんどない状況でした。

これまでの事業のつながりを生かして、音楽などエンターテインメント分野での展開を期待していたのですが、難しい状況で。サービスは使えても利用シーンが少ないという厳しいスタートを切りました。

―早速、予期せぬ逆境に立ち向かうことになりましたね。

当時は震災発生から2ヵ月が経ち、被害の状況もある程度見えてきた時期。復興のためのNPO法人が立ち上がったり、ボランティアを募ったりと支援の動きが広がっていました。我々も何らかの形での支援を検討する中で、ピーティックスのサービスを提供することが“支援の支援”になるのでは?と考えたのです。 

そこで、支援活動を行っている主催者に対し、手数料を原価まで下げてサービスを提供しました。「彼らや志のある人がより活動しやすくなれば」。その一心でしたね。 

そして次第に落ち着きを取り戻していく中で、主催者の方々からピーティックスが広がっていったのです。日頃からボランティア活動やイベントを企画している方が多く、その活動の中に我々のサービスを取り入れていただきました。結果さまざまなイベントが持ち込まれるようになり、ユニークなコミュニティがどんどん広がっていきました。

公式noteでは季節やテーマにあわせたイベントの紹介も。気になるイベントが多い!

―草の根の活動を支援していくうちに、多様なイベント・コミュニティが集まる場所に成長したのですね。

以降は順調に展開が進み、2013年には海外に進出しました。ニューヨークに拠点を置き、シンガポールを中心にアジア諸国でもサービスを展開。2019年にはやっと黒字化が見えてきました。

しかし、2020年のコロナ禍で大半のイベントが中止に。オフラインイベントが中心だったピーティックスにはオンラインイベントのノウハウがなく、最大の危機を迎えました。 

―またしても逆境が!そこからどのように回復を遂げたのでしょう?

どうすることもできない状況に戸惑っているのは、イベント主催者の皆さんも同じ。そこで当社のメンバーと主催者の方々でミーティングを行いました。課題や悩みを共有し、模索した結果、やはりオンラインしか道はないなと。ビジネス・エンタメ問わず、すべてのジャンルの主催者からの声で我々も決断しました。

方向性を決定してからは、とにかくイベントを組んで、オンラインに慣れることを最優先にしました。オンライン上でコワーキングスペースを開いたり、24時間のチャリティーライブを開催したりと徹底的にチャレンジしましたね。そこで気付きも生まれ、機能の追加や改修でサービスをブラッシュアップ。それらを続ける中で利用はどんどん増えていき、2020年は過去最高の売上を達成しました。

当時開催された24時間イベント。孤独を感じていた人々を勇気づけた。

―2021年以降も前年比売上100%超を達成されているとのことで、勢いは止まりませんね!現在のイベントの状況はいかがでしょうか。

イベント比率としては、オンライン・オフラインがちょうど1万件ずつで半々程度です。オンラインではビジネス系イベントが数多く残っているので、引き続きサポートしています。 

コロナ禍を乗り越えられたのは、絶望的な状況からのスタート経験があるからかもしれません。「正しいと思うことに、とにかくチャレンジする」、そんな心構えでずっと動いています。

アーリーアダプターからの広がり×ピーティックス独自の関係構築

ーサービスの主なユーザー層をおしえてください。

オールジャンルの特性から、さまざまな方に利用いただいています。ただ当初はアーリーアダプター(初期採用者)が多かったと記憶しています。新しい体験を提供する主催者の方々が集まり、それに興味がある人がユーザーとして加わり広がっていったイメージです。サービス開始から14年経つ現在は、さらにその輪が拡大しているように思います。 

男女比としては半々。年齢は20代半ばから40代半ばの方が多いですね。新たな趣味やコミュニティ、サードプレイス探しに活用いただいています。 

趣味探しにぴったりな特集。ワンコインで参加できるイベントも多く、お試しにも◎!

ー性別も年代もバラバラのユーザーと、どのように関係を築いているのか気になります。

ピーティックスのサービスでは、ユーザーが「イベント主催者」と「イベント参加者」の2つに分けられます。 

まず主催者との関係構築に着目すると、“営業しない”ことが大きなポイントです。

これは創業時からの大原則。サービスを売り込むのではなく、コミュニティに寄り添うのです。

もう1点挙げるなら、当社のスタッフの行動力と好奇心です。コミュニティに所属していたり運営していたり、イベントを自ら企画しているスタッフも多くて。運営や動き方に理解と知識があるので、具体的かつ的確な意見やアドバイスを伝えられる。その点も主催者の方々の信頼につながっていると思っています。

さらに特徴としては、ビジネス感を感じさせない関わり方もあるでしょう。

打ち合わせに参加し、熱い議論を交わしながら「ピーティックス」の名を一度も出さずに帰社したスタッフもいるくらいです(笑)。

そんな姿勢が共感・信頼を生み、大切なイベントやコミュニティを預けていただけるのでしょうね。

ー営業の仕方が想像と真逆で驚きました!後者の「イベント参加者」についてはいかがですか?

レコメンデーション機能の活用が挙げられます。過去の参加履歴や興味に基づいたイベントを個人ごとに提案しています。常に興味を引くイベントがピーティックス上にはある。それが参加者のエンゲージメント向上につながっていると思います。

ー実際、膨大なイベントの中から「これ!」というものを探すのはなかなか大変ですよね。レコメンド機能によって迷わずにすみますし、また興味が湧いて、また参加して……とポジティブな循環が生まれそうです。

2万件以上のイベントとなると、選択肢はかなり多いですよね。的確なレコメンドをしていかないと、埋もれてしまって届いてほしい人に届かない。興味・関心があるだろう人には必ず届いてほしいので、レコメンドは今後もしっかり行っていくつもりです。

「ジャンルに関係なく、面白いイベントを紹介していきたい」と話す藤田さん。

ピーティックスのコミュニティ:出会いと支援、化学反応の場

ー数多くのイベント・コミュニティを支援されていますが、具体的にはどんなサポートを提供しているのか伺いたいです。

実は、我々自身もピーティックス上でコミュニティを運営していて、そこでの知見を活かしたサポートなどを行っています。たとえばイベント主催者を対象としたコミュニティとイベントサロン「コミュニティテラス」。最近ではマーケターを対象とした「マーケティングテラス」、若い世代を対象としたU29コミュニティも開設しました。毎月イベントを開催し、レポートを発信してナレッジをシェアしています。主催者の方に登壇いただき、お話しいただく回もあります。 

さらに主催者のためのサイト「Peatix U」も立ち上げ、エンゲージメント向上やコミュニティづくりを支援しています。

 「Peatix U」https://learning.peatix.com/ja/

コミュニティ内でのやり取りも活発ですね。そこで出会った人がユニットを組み、一緒にイベントを開催することもありました。

ーサポートの場が、出会いとアイデアを生む場としても機能しているのですね。 

我々のコミュニティで出会った人がつながって、掛け算が生まれる。新しいムーブメントやアイデアが生まれる。そうした出来事は頻繁に起こっていて、素直にありがたくうれしいことだと受け止めています。

 サポートがそれぞれのコミュニティを発展させ、さらに新しいつながりを生み、さらに広がっていく。面白い化学反応が起こる場所であり続けたいですね。

記念すべき第1回のコミュニティテラスは「地域」がテーマ。質問が飛び交う活発な回に!

ーコミュニティ支援といえば、マイノリティコミュニティや社会的支援を必要とする方々にも積極的に働きかけているイメージです。

我々が重視するワードのひとつに「多様性」があり、女性やLGBTQ+のコミュニティ支援は長年継続しています。

毎年3月には国際女性デーにあわせて、6月にはLGBTQ+のプライドマンスにあわせて支援を強化します。各団体の主催者にインタビューしたり、イベントに登壇いただいたりと活動はさまざまです。 

我々が目指すのは、活動への理解と広がり。

各団体が誰を対象とし、どのような活動をしているのかなどをインタビューし、当社の記事としてまとめます。そして我々のメディアやSNSから発信していくのです。2024年の国際女性デーでは、仕事・身体の変化など女性ならではの課題に取り組む団体も取り上げました。

実際の記事はこちらから:https://note.peatix.com/n/n8da7c5795f0b

ーイベント自体を応援しつつ、意識の醸成やきっかけ作りもサポートしているのですね。

長年続けているのは、女性やLGBTQ+の2つですね。ほかにも、スタートアップのコミュニティを紹介したりと、小さなサポートを都度提供しています。

「想いに共感」主催者の言葉が響いた瞬間

ー現在、イベントへの参加者数は年間520万人を超えています。ピーティックスがこれほど多くの方から支持されている理由は何でしょうか?

やはりイベントの数と多彩さではないでしょうか。

どんな人でも少し探したら、興味を持つイベントが見つかる点は強みだと考えています。

参加者の方々からは「ピーティックスのスタッフの顔が見える」とのお声もいただいています。我々はフットワークが軽いので、イベントの現場に行きますし、参加もする。おそらく、スタッフ全員にイベントやコミュニティへの愛情があるのでしょうね。支持されるのは、スタッフの愛情や熱意が参加者の方々に伝わっているからなのかもしれません。

ー寄り添う姿勢は主催者の方々だけでなく、参加者側にも伝わっているのですね。主催者・参加者問わず、印象に残っている出来事はありますか?

14年も続けていると、類似サービスが登場したり、大手企業が参入したりと変化があります。もちろん価格競争も起こりますし、機能差も生まれます。利用者の立場で考えれば、そのあたりを比較して決定するのは当然です。 

競争が激しくなる中、主催者の方からいただいた言葉はとても心に残っています。

「それでもピーティックスを使い続けたいと思っています」。

その当時、価格でも機能でも他社に勝ちきれない点がありました。では、なぜあえてピーティックスを使うのか? 

それは企業としてずっと発信してきた想い・姿勢に共感しているから。

だからピーティックスに自分たちの大事なイベントを預けたいし、ここでコミュニティを続けたい。

そんな風におっしゃっていただきました。 

ー長い間、ともに歩んできた方の言葉だからこそ響くのでしょうね。報われた気持ちにもなる一言です。

感謝しかありませんでした。SNSや人づてに聞いた話だと、「イベントに参加して、人生に変化が生まれました」「起業しました」という話もあります。あとは「イベントで出会ってお付き合いが始まり、結婚しました」なんてお話も。

我々のサービスが誰かの人生を豊かにできたのであれば、少しでもそこに関われているのであれば、本当にうれしいですね。

藤田さん自身もさまざまなイベントに参加して世界が広がったと話す。

新たな挑戦!企業との提携や初の「コミュニティアワード」を開催

ーピーティックスの今後の取り組みについてお聞かせください。 

いま力を入れているのは、コミュニティの醸成と支援です。

コミュニティ運営は機能的にまだ足りていない部分があると感じています。その中でも企業からユーザーに向けてのコミュニティ醸成は、特に強化していく予定です。いわば企業のコミュニティマーケティング・ファンマーケティングに協力するかたちですね。我々のプラットフォームとナレッジで応援できると考えています。 

先日のプレスリリースでは、TSUTAYAで知られるCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)さんとの提携を発表しました。

CCCさんはSHIBUYA TSUTAYAをはじめ、素晴らしい場所でユニークなイベントを開催しています。オフラインでのイベント力に優れているCCCさんと、オンラインに強い当社が力をあわせれば、より面白いビジョンが描けるはずです。 

たとえば、TSUTAYAの店頭でプロモーションイベントを開いた後、それを一夜限りの打ち上げ花火にしないこと。ファンの熱量や想いをコミュニティで引き継ぎ、育てる仕組みを生み出しているところです。コミュニティの発展への寄与は、今後の大きな取り組みのひとつに挙げられます。

また、大阪・関西万博の「TEAM EXPO 2025」も、実はピーティックスが支援しているので、そちらも成功させたいですね! 

ー企業を巻き込んでのさらなる展開が楽しみです。ほかにも新たな取り組みはありますか? 

今年はピーティックス史上初となる「コミュニティアワード」を開催します。

これは全国各地で活動するコミュニティの素晴らしい取り組みを表彰するプログラム。地域活性系のコミュニティから、オンラインで活動するコミュニティまで11カテゴリーに分けています。草の根の活動も含めて、多様なコミュニティを応援していきたいですし、皆さんに知ってほしい取り組みです。

コミュニティアワードを通じて、さまざまな活動に光を当てるのも我々のミッション。しっかりと形にしていけば、社会貢献にもつながるはずです。 

コミュニティアワードの詳細はこちら:https://note.peatix.com/n/n30be3cbf7b21

ーファンへの想いや具体的な施策、取り組みまで詳しくありがとうございました!

取材を終えて

(左)藤田さん(右)一緒にお話を伺った中西さん(マーケティング&コミュニケーション部)。中西さんが抱えるのは、マスコットキャラクターのPeaちゃん。

ユニークなジャンルのイベントを取り上げ、多くの人に利用されているピーティックス。その背景には藤田さんをはじめ、スタッフの皆さんのイベント・コミュニティへの愛情があったのです。

筆者がはじめてピーティックスに触れたのは2020年。まさにコロナ禍のタイミングでした。

あれから5年が経ち、再びイベント情報をチェックすると、当時は見られなかったオフラインイベントが数多く並んでいます。

自由に行動できる喜びをあらためて感じるとともに、「あの頃もっとオンラインで勉強しておけばよかったかも」と少しだけ後悔も。

しかし学びに遅い・早いはないのです。

仕事に関連のある分野でも、趣味の分野でも何でも興味のあることにチャレンジしてみればいい。

藤田さんの言葉には、そんなエールが詰まっていたように思います。

皆さんもぜひ、ピーティックスで新たな学びや出会いを体験してみてはいかがでしょうか。

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