個ではなく、チームで成長と成果を生み出す Nint流「企業理念を形にする」組織づくり

Takanashi

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会社が掲げる「Mission/Vision / Value」を従業員に浸透させるにはどうしたら良いの?そもそもどんな施策に取り組むべきなのかわからない……今回、そのヒントを探るべく、MVVの推進に力を入れている企業に話を伺いました。

こんにちは、&Fans編集部の小鳥遊です。&Fansでは、熱狂を生むさまざまな企業や個人のストーリー、それらの考えに紐づくマーケティング概念などを紹介しています。

今回話を伺ったのは、「株式会社Nint」でMVV推進部門 部門長を務める唐澤さん。

株式会社Nintは、ECデータ分析ツール「Nint ECommerce」を展開するスタートアップ企業であり、設立当初から「Mission/Vision / Value(ミッション/ビジョン/バリュー)」を意識した経営に取り組んでいます。

人事組織を「MVV推進部門」と命名してMVV浸透に注力したことで、組織を大きく前進させる結果に。MVVを推進するだけで終わらせず、従業員に熱量をもって取り組んでもらえる秘訣は何なのでしょうか。さまざまな角度から紐解いていきます!

目次

設立者のリアルな体験が息づいた「Mission」

ーまずは、株式会社Nintについて教えてください。

当社は、国内で2,000社以上の導入実績があるECデータ分析ツール「Nint ECommerce」を展開する会社です。もともと中国でサービスを立ち上げており、現在は日本・中国の両国で事業を展開しています。後ほど詳しく解説しますが、会社運営では「Mission/Vision / Value(以下、MVV)」を大事にしているのが特徴です。

株式会社Nint公式HP:https://www.nint.jp/corp/

ーありがとうございます。御社が展開する「ECデータ分析ツール『Nint ECommerce』」についても伺ってよろしいでしょうか。

「Nint ECommerce」は、EC市場において「何が・いくらで・どれくらい」売れているのかを可視化できるEC事業者向けのサービスです。たとえば、ECサイトに商品を出品する際、勘や経験で値づけをされる事業者さまも多いのですが、読みが外れてしまうと赤字になりますよね。そこで、事業者さまご自身でEC市場の調査・分析をできるようにしたのが「Nint ECommerce」です。

ー御社は「Nint ECommerce」をはじめ、データ事業をメインに行っているのですね。そのなかで唐澤さまはどのような業務に携わっているのでしょうか?

私は「MVV推進部門」を管掌しており、名前のとおりMVVを推進する役割を担っています。この部署は、当社の代表である吉野がMVVに対する思い入れが強かったことから誕生しました。なかでも、当社が掲げるMission「データで世界を自由にする」は、自分たちの原点とこれから目指す姿を考えるなかで生まれました。

自分もチームも強くなる。2つの方向性を持つ「Value」

ー自分たちの原点とこれから目指す姿ですか……?詳しく教えてください。

当社は2018年4月にアドウェイズから独立し法人を設立しており、当時グループの代表を務めていた蘇(そ)を中心にMVVの検討がスタートしました。すでに事業としては現在に繋がるデータビジネスを展開していたため、我々の提供している価値の本質は何か、そして、自分達のアイデンティティは何か、ということを過去からこれまでの軌跡を振り返り検討しました。その結果、私たちは、データを通じて新たな機会を生み出し、私たちに関わるすべての人の可能性を最大化するために存在している、という考えに至り「データで世界を自由にする」という言葉をMissionを掲げました。

ー人の可能性や成長を大事にされているということですね。Mission/Visionを支える「Value」についても詳しく聞かせてください。

当社は6つのValueを掲げています。そのうち3つは「自身の成長」に関するもの、残りの3つは「周囲の成長」に関するものです。

ー「自身の成長」と「周囲の成長」の2つの方向性で構成されたValueとはめずらしいですね!

ありがとうございます。それぞれ詳しく説明すると、自身の成長に関するValueは「アートの発想を忘れない!」「プロフェッショナル精神!」「探索者であり続ける!」の3つがあります。周囲の成長に関するValueは「人の『わくわく』を生み出そう!」「正々堂々・謙虚であれ!」「見たことのない景色をみんなで見よう!」の3つです。自身の成長に関わるValueを掲げている企業さまは多いのですが、周囲の成長を言語化しているのは当社らしいポイントかと思います。

Nintが掲げる6つのValue

ー「周囲の成長」に関するValueには、どのような想いが込められているのでしょうか?

当社のMissionである「データで世界を自由にする」未来を実現するためには、1人の力だけでは限界があります。そのため、個人の力だけでなく、組織や周囲の力を合わせて、顧客や事業に貢献していこうという想いが込められています。

だからこそ、周囲と協力し合い、影響を与え合いながら成長することが欠かせません。自分の苦手分野は他の人と協力することで、組織として大きな成果を生み出せます。1人で勝つのではなく、みんなで勝つ。その結果、組織として大きな勝利につながると思っています。

MVV浸透のカギは、従業員の印象に残り“身近に”感じられること

ー唐澤さんの業務についても具体的に伺えればと思います。MVV推進に向けて取り組んだ具体的な事例をぜひお聞かせください!

新卒採用ではオリジナルの内定証書を贈っています。「MVVに照らし合わせて、あなたを採用しました」というメッセージや「入社後もMVVを意識して一緒に走ってほしい」という想いを、オリジナルの形にして伝えるために企画した取り組みです。

また、内定書と一緒に、研修で使用するノートも贈っています。研修のときからValueを意識してもらうために、ノートの表紙には6つのValueを組み合わせたオリジナル文章を印刷しました。このノートは研修時だけでなく、研修後も活用してくれています。

実際のオリジナル内定書

当社が掲げるVisionは「データの価値、人の可能性が輝く世界」です。Visionが表すように、新入社員の皆さんがキラキラ輝き、新しい可能性・挑戦に踏み出してほしいという想いを込めて、星空をモチーフにしたデザインにしています。

ーオフィスの壁も青塗りにされていますが、星空を意識していたんですね!

そうなんです。他にも、このオフィスにはMVVを意識した設計がいくつかあります。当社のオフィスは変わった形をしているのですが、ゴールデンサークル*を参考に設計しました。中心の「Why」をMissionエリア、「How」をValueエリア、1番外側の「Waht」をVisionエリアとして配置しました。また、会議室名もValueを使っているのが特徴です。

*ゴールデンサークル:『START WITH WHY』でサイモン・シネック氏が提唱する、なぜ(Why)、どのように(How)、何を(What)の順番で説明された方が共感されやすいことを表した円形の図のこと

ーオフィス設計にもMVVを意識されているとは驚きました!日々の業務面でもMVVを意識している取り組みはありますか?

Valueに沿った仕事をしている社員を表彰する企画「バリューヒーロー」は代表的な取り組みの1つです。この企画は上司が一方的に選出するのではなく、全社員投票によって表彰者を選出しているのが特徴です。投票のタイミングで「Valueを体現してる人って誰だろう?」と考える機会になりますし、バリューヒーローに選出された社員自身がValue体現に自信を持てるようになります。また、Value体現の“お手本”が生まれると周囲の社員にとっても学びにつながります。

他には、普段の業務で使用しているチャットツール「Slack」のスタンプにも、Valueのスタンプがあります。これは、全社員でスタンプを作るイベントを実施し、ライブ投票で公式スタンプを決定する取り組みを行いました。バリューにフィットした発信にはバリューのスタンプが押されて称賛されるような使われ方をしています。

ーユニークな取り組みばかりですね!各取り組みにここまでの熱量を注げるのはなぜでしょうか。

やはり社員一人ひとりが行った“良い仕事”を、Valueに照らし合わせて賞賛したいという思いが強いからです。だからこそ、Slackやバリューヒーローのようなキャッチーで面白い取り組みを社内で浸透させていくことが大事ですし、結果として社員にValueを覚えてもらえる機会にもなると思っています。

当社のプロダクトが良くなり、お客さまに喜んでいただけること。その結果として会社の売上が伸びることが、真の成長だと捉えているのですが、その実現のためには“優秀なスーパースター”が1人誕生するだけでは不十分です。スーパースターには、自分が大切にしているスタンスや考え方を「正論」として周りに伝え、組織全体に広げてほしいと思っています。そして、その「正論」を裏づけとしてValueは存在しているのだと感じています。

MVVの「新たな価値」に出会える未来に向けて

ー今後、MVV推進部門として挑戦していきたいことがあれば教えてください。

個人的には、MVVの一部のブラッシュアップが大きなテーマだと思っています。

ーブラッシュアップですか?すでに十分なほど仕上がっていると感じるのですが……

会社を設立して何年か経ってくると、MVVの解釈が時代や会社の現状とズレてくるタイミングがやってきます。そして当社は、今まさに会社として新しいフェーズに挑戦しており、その時期を迎えているので、具体的にはValueを磨き上げていきたいと思っています。

ーなるほど。具体的にはどのように磨き上げていくのでしょうか。

Nintで働くことがその社員の人生にプラスに働くようなValueへと磨き上げたいと考えています。特に新卒社員にとっては、社会人として初めて働く会社がNintです。入社後、どのような環境で働くかによって人の成長は大きく変わると思っています。だからこそ、Valueの解釈を磨き、スタンスとして社員に根づかせたいです。たとえ数年後にNintを離れることになっても、Nintで学んだValueが今後の人生に活き続けてくれるような存在を目指したいと思っています。

ー社員の今後の人生も考えているとは……MVV経営の真髄に触れられた気がします!それでは最後に、MVVの推進に向けて新たな目標があればお聞かせください。

従来の価値を超えた“良い仕事”を、社内にもっと広く伝えていきたいと考えています。当社のサービスは、お客さまにデータを提供することだけが価値ではありません。そのデータが実際にどれだけ良い影響を与えたのか、どれだけお客さまの行動を変えたのかが本質的な価値であり、社内に広めるべき情報だと感じています。広めるための具体的な取り組みとして、個人的には「社内報」の発行に挑戦したいと思っています。社内からだけでなく、外部からの声や視点をしっかりと社内に広めることで、当社が知り得なかった「新たな価値」の再認識につなげていきたいです。

取材を終えて

会社が掲げるMVVを浸透させるために、全社員にテストを受けてもらったり、ワークショップを実施したりする企業は多いはずです。しかし、その結果、MVVを意識する社員が増えたのかと問われると、自信を持って「はい」と答えられる会社は少ないのではないでしょうか。

一方で、NintのMVVは、会社都合ではなく、社員ひとりひとりの人生に寄り添い、その重要性を伝えようとする姿が印象的でした。たとえ将来、Nintを離れることになったとしても、Nintで培ったMVVの考え方を今後の人生にも活かしてほしいという「人の可能性と成長に対する想い」が伝わってきたように感じます。

Nintに在籍する社員だけでなく、退職を決めた社員にも「Nintのファン」になってほしい……そんな温かい想いがひしひしと伝わってくるインタビューでした。

取材・執筆:小鳥遊まゆか
編集:神谷周作

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