続けることが、いちばんのサステナブル。暮らしを変える小さな選択

Kosada

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環境にいいこと、って聞くと、ちょっと身構えませんか?

でももし、がんばらなくても自然と続けられる“エコ”があったとしたら。
それは、暮らしの形を少しずつ変えるきっかけになるかも……

こんにちは、&Fans編集部のこさだです。

&Fansでは、熱狂を生むさまざまな企業や個人のストーリー、それらの考えに紐づくマーケティング概念などを紹介しています。

「サステナブル」や「エシカル」という言葉を耳にすることが増えたいま。

正しさよりも、心地よさで続けられる“エコ”のかたちを探す人が増えています。

ニュージーランド発の「ecostore」は、まさにそんな発想から生まれたブランドです。

自然由来の原料はもちろん、製造工程や容器素材、使い心地やデザインにまでこだわったアイテムを展開し、量り売りやリフィル体験など、サステナブルな仕組みをいち早く取り入れてきました。

さらに近年では、家族で楽しみながら環境への意識を育てるワークショップを開催。“楽しさ”と“気づき”を掛け合わせながら、エコを特別なことではなく、暮らしの一部として共創していく取り組みを広げています。

今回は、そんな「ecostore」の取り組みや想い、そして描く未来についてお話を伺いました。

目次

地球と人にやさしい暮らしを目指して誕生した「ecostore」

ーまず、「ecostore」のブランドについて教えてください。

自然豊かなニュージーランド北部の「エコビレッジ」で、マルコム&メラニー・ランズ夫妻によって設立されたブランドです。2人は自然と共に自給自足の生活をする中で、「美しい自然の水と同じくらい、家庭から排出する水も綺麗にしたい」と自宅の倉庫で洗剤を手づくりし始めました。最初は知人へのメールオーダー販売からスタートしましたが、評判が広がり「環境によいものは、人の健康にもよい」という気づきとともに、2000年にはスーパーマーケットでの販売を開始。ニュージーランドでは、いまや国民的ブランドとして知られています。

自然豊かなニュージーランドの北部にある「エコビレッジ」

ーニュージーランドではかなり有名なブランドだとお聞きしています。

エコストアを知らない人はいないと思います。2021年には、環境や社会への配慮を重視する企業に与えられる国際認証「B Corp」を取得し、厳しい評価基準をクリアしました。さらに、サステナブルブランドを評価するニュージーランドの団体からは、業界を超えて10年連続で1位を獲得。信頼と実績のあるブランドとして、広く認知されています。

ー日本に上陸した経緯を教えてください。

「ecostore JAPAN」は、ニュージーランド本国とマッシュホールディングスの合弁会社として2017年に設立されました。きっかけは2016年、コスメキッチンを運営するマッシュビューティーラボのメンバーが、オーガニックやナチュラルを“特別なもの”ではなく、誰もが使えるものにしたいと考えていた時に「ecostore」と出会ったことです。製品の品質はもちろん、ブランドの思想にも深く共感し、取り扱いをスタートしたのが始まりでした。

日本のメーカーにはないスタイリッシュなパッケージ。見かけた方も多いのでは?

ー特にどういった部分で共感したのでしょう?

実は「ecostore」は“100%オーガニック”にこだわっているわけではありません。環境にも人にもやさしく、安心して使える原料を世界中から厳選しています。オーガニックに限定してしまうと、価格が高くなったり生産量が限られてしまうため、持続的に使い続けられる品質を優先しながらも本質的に良いものを作り続ける姿勢に共感しました。

ーたしかに、“環境にいい=オーガニック”と思い込みがちです。あえて限定しない理由を教えてください。

ナチュラル系の洗剤って、泡立ちが弱かったり汚れが落ちにくいイメージがありますよね。「ecostore」では、毎日使うものだからこそ使用感や保存性も大切にしています。安全性が確認された最小限の化学由来成分を取り入れつつ、植物・ミネラル由来の原料をベースに開発。心地よさと安心感の両立を大事にしています。

ーなるほど、使い続けることへのこだわりも感じます。他にも特徴はありますか?

中身だけでなく、容器にもこだわりがあります。サトウキビ由来のプラスチックとリサイクルプラスチックを組み合わせた素材を使用し、環境負荷を軽減しています。サトウキビは成長過程でCO2を吸収するため、石油由来のプラスチックに比べて環境にやさしい素材なのです。さらに、リサイクルプラスチックを活用して強度とサステナビリティを両立しました。

量り売り文化をもっと広めていくために「続けるための仕組み」をデザインする。 

ー「ecostore」といえば、量り売りが特徴的だと思いますが、誕生した背景が気になります。

ニュージーランドでも、最初はボトル入りのみ販売していたそうです。ある時お客さまから「なぜ中身だけで売らないの?そのほうがゴミが出ないよね」と声をかけられたことがきっかけで、量り売りを初めて導入しました。それが次第に定着し、現在ではニュージーランド国内で100カ所以上で実施されています。

ー日本でも上陸当初から行っていたのですか?

2016年4月に日本1号店を恵比寿にオープンした翌月から、バルク型の量り売り「リフィルステーション」を始めました。マッシュグループの大切にする「ウェルネスデザイン」の考え方とも共鳴するリフィル文化に感銘を受け、ブランドデビュー当初から実施することが決定していました。

ー当初のお客さまの反応はいかがでしたか?

最初のころは、あまり試してもらえなかったです。「ecostore」というブランドの知名度も当時はまだ低く、日本では量り売りで洗剤を買うという習慣がなかったので、なかなか浸透しませんでした。今思うと、よく続けてこられたなと思います。

ーそこからどうやって広がっていったのでしょう?

グループ企業の展開するオーガニックセレクトショップ「Cosme Kitchen」や「Biople」でも量り売りを導入してもらったことで、少しずつ認知が広がりました。続けていくうちに、社会全体で「プラスチックを減らそう」という流れが強まり、取材される機会も増えました。また、大手コンビニエンスストアでの取り扱いが始まったことも大きかったです。そこから小売店舗にも広がり、関心を持ってくださる方が一気に増えました。また、お客さまにとって量り売りを利用するメリットがなければ意味がないため、「中身だけ購入したほうがお得ですよ」と店舗で地道に案内し続けてきました。ここに至るまで約9年かかりましたが、ようやく安定した取り組みとして根づいてきたと感じています。

ー順調に見える裏側で、続けていくためのハードルもあったと思います。

一番の課題は、ボトルを持ってこなければいけないことでした。最近は持ち歩くバッグも小さくなっていますし、詰め替えのために持ち歩くのはハードルが高い。さらに、衛生面や安全性の観点から、スタッフが注ぎ入れる必要があるため、人手の少ない店舗では導入が難しいという課題もありました。

ー中でも、どんなアイデアや仕組みが効果的だったと感じますか。

昨年から新しい量り売りシステム「ecofill(エコフィル)」という自動充てん機を導入しました。従来のボトル式とは違い、専用のパウチに規定量の中身を詰める仕組みです。空の状態ならくるっと丸めて小さなバッグにも入るので、仕事帰りにも気軽に立ち寄れます。さらに、10回程度繰り返し使える強度があるのも魅力です。現状、日本では“パウチ=使い捨て”という意識がありますが、それを変えていきたい。使い捨てではない、新しい当たり前を広げていきたいと考えています。

ー便利さが増したことで、実際に利用される方も増えてきたのではないでしょうか。

着実に増えています。現在、恵比寿店では売上の約3割が実は量り売りなんです。最近では、「ecofill」の導入によってボトル派からの切り替えも進んでいます。「こっちの方が使いやすい」と言ってくださる方も多く、男性のお客さまや偶然立ち寄った方が興味を持って挑戦してくださることも増えました。

ーエコフィルと従来のバルク型、今後の展開が楽しみです。

バルク型の量り売りは“好きな量だけ買える”のが魅力なので、旅行用に少量だけ買いたい方にも人気です。試してみたいというお客さまにもぴったりですね。一方で「ecofill」は利便性が高く、持ち運びやすいのが特徴。どちらにも良さがあるので、両軸で続けていく予定です。

ー少量で買えるのは確かに嬉しいです!試してみたくなります。

あと、バルク型の量り売りでは、洗浄・乾燥したものであれば基本的にどんな容器でもOKとしています。金属製は化学反応の恐れがあるためお断りしていますが、口が広ければ瓶でもペットボトルでも問題ありません。中には2リットルのペットボトルを繰り返し使っている方もいらっしゃいます。見た目を気にされがちですが、使い続けること自体が、もうすでに“エコな選択”だと思います。

楽しみながら環境意識を育てるワークショップ

ー最近ではワークショップなどの取り組みも積極的に行っていると聞きました。

量り売りを広めるにあたって「ボトルがもっと素敵で、捨てたくないものになれば、もっと活性化するのでは?」という発想から始まったのがecostore直営店などで開催している“お絵かきワークショップ”です。親子での参加が多く、子どもたちがボトルにかわいい絵を描いて楽しんで参加してくれます。最近ではギフト用にペットの写真を入れる方、“推し活ボトル”を作る方もいて、自由な発想で楽しんでいただいています。特別なボトルだから、自然と捨てずに使い続けたいと思ってもらえるんですよね。

ー確かに、愛着が湧くと自然と使い続けたくなりますね。体験型のコンテンツを行うのは、どのような意図があるのでしょうか?

私たちは、無理に「サステナブルなことをしよう」と押しつけるのではなく、“好きなこと”や“楽しいこと”の延長線に環境への意識がある、という状態を理想としています。「親子で遊べる場所を探していた」「たまたま通ったから参加した」そんな軽い気持ちで参加してもらえると嬉しいです。楽しく描いたボトルをきっかけに、詰め替えてもう一度使おうと自然に量り売りをしてもらえる。そんなポジティブな循環をつくりたいと考えています。

ー最近ではセサミストリートとのコラボレーションも話題になりましたね。

セサミストリートは、もともと子どもの教育支援や社会問題への関心をテーマにしていて、さまざまな問題に取り組んでいます。そういった理念が「ecostore」の考え方と近く、コラボが実現しました。両者にとって親和性が高い「水」をテーマにしたワークショップを企画し、セサミストリートマーケットの店舗内で実施しました。

ーどんな方が参加されたのでしょう?

セサミストリートのファンの親子が多かったです。「ecostore」をすでに知っている方もいれば、初めて知る方もいましたが、どの子もすごく真剣に絵を描いてくれて、完成したボトルには、自分の手で洗剤を詰めてもらいました。“自分で入れた”という記憶は、長く残ると思っています。

ーワークショップの現場では、どんな表情や反応が印象的でしたか?

「量り売りは知っていたけど、初めて体験する」という方が多くて。ワークショップをきっかけに気楽に始められると感じてくださったのが嬉しかったです。また、学校教育でもサステナブルについて学ぶ機会が増えているので、子どもたちにとっても学びと実体験がつながる場になっているそうで、親子で楽しみながら取り組めるのもこの活動の魅力だと思います。

ーエコストアのチームとしても、やりがいを感じる取り組みなんですね。

特に量り売りは、「ecostore」を象徴する仕組みでもあるので、スタッフ全員が誇りを持っています。まだ他社でも珍しい取り組みなので、小売店や学校からも多く問い合わせをいただいています。中学生や高校生が課題研究のテーマに選んでくれて「量り売りについて教えてください」と連絡をもらったこともあります。そうやって若い世代が関心を持ってくれることが、本当にうれしいですね。

エコをもっと身近に広めていきたい

ーecostoreが思い描く次のステップを教えてください。

まずは、試してもらうチャンスを増やすために、気軽に始められる「ecofill」のような機械を設置する場所を広げていきたいと考えています。ecostore直営店を皮切りに始めたサービスですが、今年10月からはイオンスタイル幕張新都心でも導入し、現在はCosme Kitchen グランツリー武蔵小杉店、Biople 流山おおたかの森 S・C店を含めた4店舗に設置しています。今後もイオンリテールが運営する店舗をはじめ、他の商業施設や小売店へと順次拡大していく予定です。

量り売りシステム「ecofill」:自動で専用のパウチに中身を詰めることができる。

ー確かに、家の近くにあれば試してみたくなりますね!

「この機械、なんか面白そうだからやってみよう」ってくらい軽い気持ちで触れてもらえると嬉しいですね。それだけでも、エコな暮らしの第一歩になると思っています。現在は、恵比寿のecostore直営店、Cosme Kitchen グランツリー武蔵小杉店、Biople 流山おおたかの森 S・C店、イオンスタイル幕張新都心の4店舗で稼働していますが、操作がシンプルで、店舗にとっても扱いやすく、お客さまにも使いやすいので好評です。新しい形の量り売りだと感じています。

ー将来的に、どのように広がっていくと理想的ですか?

“インフラのように当たり前の存在”になれたらいいなと思っています。駅やコンビニ、ガソリンスタンドなど、日常の中で気軽に立ち寄れる場所にあって、「明日洗剤が切れそうだから、帰りに少しだけ補充していこう」という感覚で使えるようになったら素敵ですね。

「ecostore」は食器用や衣類用の洗剤はもちろん、掃除用洗剤にボディケア、ベビーシリーズまで幅広く展開しています。だからこそ、日常生活の中で買える場所を増やしていきたいです。「ecofill」や量り売りの仕組みを通して、“環境にいいことが自然と続く社会”を実現したいと考えています。

取材を終えて

環境にやさしい行動を“義務”ではなく、
「楽しい」「かわいい」「使ってみたい」という気持ちから広げていく。
今回の取材では、そんな前向きなエネルギーを強く感じました。

堅苦しくなりがちな環境問題も、好奇心をくすぐる仕組みやデザインを通じて、「ecostore」はそのハードルを軽やかに越えていきます。

無理せず、心地よく続けられる“地球にやさしい暮らし”。
その未来の“あたりまえ”が、少しずつ日常に広がりはじめています。

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