日本初! 独自の技術でエンゲージメントを可視化。従業員の熱量を測る「Wevox」を生み出した、アトラエの考える組織のあり方

Shibashi

Shibashi

こんにちは、&Fansライターの椎橋です。&Fansでは、熱狂を生む企業や個人のストーリー、それらの考えに紐づくマーケティング概念などを紹介しています。

今回は、エンゲージメントという新しい概念をいち早く日本に取り入れた、株式会社アトラエの川本 周さんにお話を伺いました。

組織と従業員の関係を根本から見直すキッカケを創る、組織力向上プラットフォーム「Wevox(ウィボックス)」が、どのような人たちによって生み出されたのか。アトラエが掲げる理想の組織づくりや、具体的な取り組みを紐解いていきます。

目次

従業員のやる気や貢献意欲を数値化できる「Wevox(ウィボックス)」で実現した組織改革

―漫画『SLAM DUNK』(著:井上雄彦/集英社)に登場する、湘北のような熱量ある組織づくりに興味があると伺いました。スポーツとの関連も含め、エンゲージメントが企業価値の向上にどのような影響をもたらすのかお教えください。

エンゲージメントを高めると、人と組織のパフォーマンスが向上し、さまざまな課題を克服することが可能になります。

従業員全員が、やりがいを持って活き活きと働ける環境を整えることは、離職率の低下をもたらし、業績が上がる効果があると証明されています。

日本でもエンゲージメントの重要性が認知されはじめており、多くの方々に「Wevox」をご利用いただいています。

エンゲージメントと企業価値の因果関係を証明した記事

―スポーツとエンゲージメントにはどのような関係性があるのでしょう。

エンゲージメントとスポーツには大きな親和性があります。

例えばスポーツ選手たちは、本人が心から熱中し、チームワークを高め、日々技術を向上させながら周囲を魅了させる力を持っていますよね。

選手の皆さんは、自分が打ち込んでいるものに対し、常に情熱を持って力を発揮しようとしています。

人の熱量や主体性を大切にすることは、スポーツだけに留まらず、組織を運営する上でも極めて重要になってくるのではないか、と考え「企業」×「エンゲージメント」に注目をしました。

―「Wevox」は、エンゲージメントを測定できると聞きました。どのような仕組みで数値化させているのでしょう。

「Wevox」では、エンゲージメントを「従業員が主体的に仕事や組織に取り組めている心理状態」と定義し、これを32の設問で測定しています。その中で、エンゲージメントを左右する重要な9つのドライバー(要素)と、30近い詳細項目をアンケート項目に落とし込みし、1~2分ほどで気軽に回答できるシステムづくりをしました。

エンゲージメントを左右する9つのドライバー(要因)

職務

職務に対して満足度を感じているか

自己成長

仕事を通して、自分が成長できていると感じているか

健康

従業員が仕事の中で、過度なストレスや疲労を感じていないか

支援

上司や仕事仲間から、職務上又は自己成長の支援を受けているのか

人間関係

上司や仕事仲間と良好な関係を築けているのか

承認

周りの従業員から認められていると感じているか

理念戦略

企業の理念・戦略・事業内容に対して納得・共感しているか

組織風土

企業の組織風土が従業員にとって良い状態なのか

環境

給与、福利厚生、職場環境といった従業員を取り巻く会社環境に満足しているのか

―1〜2分! そんなにスピーディに回答できるんですね。

やはりアンケートと聞くとあまり面白くないイメージを持たれる方が多いかと思いますが、私たちは「楽しく簡単に」取り組めるUXの磨き込みに努めています。

-回答された結果は責任者のもとにデータが送られるのでしょうか。

結果は回答したメンバー全員で認識、共有が可能です。また、回答結果から現在の状態を「どう読み解くか」「改善のためにどうアクションするか」といった解決策までシステムが提案してくれるため、全てのメンバーが現状を理解した上で、実用的なチームづくりを進めることができます。

―「Wevox」を導入した会社には、どのような改善、向上が見られましたか。

成功事例は本当に多種多様です。自社で刊行した『組織の未来はエンゲージメントで決まる』や『わたしたちのエンゲージメント実践書』という書籍に、企業や団体がWevoxを通じて得た成果事例を多数掲載しています。

テキスト, 図形, 矢印

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
『組織の未来はエンゲージメントで決まる』(著:新居佳英・松林博文/英治出版)
テキスト

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
『わたしたちのエンゲージメント実践所』(著:株式会社アトラエ Wevoxチーム・田中 信/日本能率協会マネジメントセンター)

その中の一部を挙げますと、エンゲージメントが高まったことで、結果的に株価を含めた企業価値にも良い影響を与えたと考えられる事例や、マネジメントの負荷軽減、若手も主体的に自チームづくりに参加する組織開発、というケースなどがあります。

―様々な課題を可視化させることで、改善点が見出せるわけですね。

それから、「いったい何からはじめれば良いのか」と迷われ、悩んでいる新任マネージャーのような立場の方にもご活用いただいています。

「Wevox」を利用していただき、チームの状態を数値化させながら、メンバーの離職防止やパフォーマンス向上を同時に実現できたという事例も聞いております。導入企業それぞれが、自分たちの課題に合わせた取り組みを展開しています。

―もともとは求人サイトを運営されていましたが、その経験がどう「Wevox」の開発に結びついたのでしょうか。

はじめは、求職者と企業を成果報酬型でマッチングする、求人メディア「Green」を運営していました。企業さまの採用支援を長年行ってきましたが、採用時のマッチングを支援するだけでは真の意味で「人と組織を元気にする(Greenのプロダクトビジョン)」を実現することは難しく、採用後の定着〜活躍を生み出せる組織づくりを支える必要性を感じていました。

―環境の善し悪しや人間関係って実際に働いてみないとわからないものですよね。

加えて、海外では先行してエンゲージメントが注目されており、社員が主体的に活躍できる組織づくりを実現することが徐々に日本でも求められ始めました。アトラエも、理想の組織のロールモデルを自分たちで創ることを目指して日々組織づくりを実践しているため、まずは自分たちの想いをプロダクトにしようという気持ちで新規事業として「Wevox」を開発しました。

テーブル, 屋内, 窓, 人 が含まれている画像

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

最初は「法人ドッグ(仮)」という名称でした。企業を健康にする人間ドッグの企業版というイメージですね。今考えると直球すぎますよね(笑)。

―内容を把握する上ではとてもわかりやすい名前ですよ!

コンセプトを理解する上ではわかりやすいですよね。でも、多くの方に利用していただくためには、やはり名前も大事になってきます。機能面もブラッシュアップさせ、「We(私たち)」と「vox(ラテン語で「声」)」という2つの単語を組み合わせ、「Wevox」という造語をつくり上げました。

この2つの単語には、自分たちの「声」で自分たちの組織を創るという想いが込められています。

Webox:https://get.wevox.io

アイコン

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

役職を撤廃し、誰もが気軽に意見を言い合えるフラットな組織づくり

―アトラエ自身が「理想の組織づくり」を実践するうえで行っている施策はありますか。

私たちは「意欲ある仲間が、無駄なストレスなく活き活きと働き続けられる組織」づくりを目指しています。そのために、役職はミニマムに抑えてフラットな体制を取ったり、評価制度も特定の上司が一方的に決めるのではなく、周囲の同僚たちから評価を受ける「360度評価」を採用して、互いの貢献度を確認し合う仕組みを築いています。

―「360度評価」はどのように行っているのでしょうか。

現状としては、「この人になら自分の貢献を評価してもらえる」と思う人たちを挙げてもらい、その中で評価者と被評価者の組み合わせをつくってそれぞれがどれぐらい貢献しているのかを評価の上、貢献度ランキングを生成します。そこから会社に貢献した順にアトラエの社会への貢献である利益の一部を分けていくシステムです。

―会社に貢献した姿勢が報酬につながるというのは、やりがいに直結しそうですね。

情報も極力オープンにし、ダイレクトチャットも原則禁止にし、社内のやり取りは全員が閲覧できるようになっています。良い意味で全てにおいてオープンなので「さっきのプラン提案方法、自分が担当するときの参考にしよう」とか「今のやりとりは良くなかったんじゃない」という風に、良い点も悪い点も、気付いた人がすぐにアドバイスできるような雰囲気づくりを大切にしています。お互いがお互いを信頼しながらより良いものを生み出していくためにも、コミュニケーションを取り合うことは大切にしています。

人, 屋内, 天井, 立つ が含まれている画像

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
談笑交じりに話し合いをするアトラエメンバーたち。

―フラットな組織運営で素晴らしい面がたくさんある反面、「誰が責任を取るか」といった難しさもあるのではないでしょうか。トラブル時の意思決定はどのように進めていますか?

いわゆるガバナンスの観点では、当然上場企業として必要十分な統治体制は整えていますし、チームごとの役割や最終責任は明確にしています。

―従業員に役職を設けない、いわゆる「ホラクラシー*」制度を取り入れた中で生まれてきた課題はあるのでしょうか。

*ホラクラシー:役職や階級のないフラットな組織形態で、自律的なチームが意思決定を行う組織のあり方

厳密には「ホラクラシー」を取り入れたというわけではなく、自社のカルチャーを大切にする上で行き着いたシステムが「ホラクラシー」制度に近かったに過ぎないのですが、試行錯誤の連続で問題や課題は多々あります。

役職がありませんので、従業員は常に高い当事者意識を持たなければなりません。やりたいことがあるなら自分が責任を持って動き、自ら周りを巻き込んでいくことが求められます。

自分のやる気と他のメンバーとの熱量の差も生まれてくることもありますし、当事者意識を持ち続けるのが難しい場合もあります。

ただ、ヒエラルキーのある組織とは違って、20代であっても知的さとワイルドな情熱があれば年功序列関係なくトライできるので、やりがいを実現できる環境ではあります。

―当事者意識を持ち、熱量を持って業務をこなすことが求められる中で、会社のビジョンが薄らいでしまうこともあるのではないでしょうか。

日々の業務で手いっぱいになることはあるかも知れません。。その対策としては、月に1回、2時間は必ず業務を全て止め、全社員で「理想の組織」について徹底的に話し合う「ATPF(アトラエ的プレミアムフライデー)」を設けています。

組織制度や日々のちょっとした違和感、人材開発に至るまで、様々な角度からのテーマを設けをし、全員でビジョン実現に立ち返る機会を大事にしています。

アトラエのカルチャーに共鳴する仲間を見つける

―採用において、特に意識していることはありますか?

前述のようにアトラエは「意欲ある仲間が無駄なストレスなく活き活きと働き続けられる組織」という根底の想いを大切にしています。そのため採用では、私たちの考えに重なる人材であるかどうかをとても重視しています。知的でバイタリティがあり、チームで成果を出せる人材かどうか、時間をかけて見極めています。

―具体的にはどのように見極めるのでしょうか?

面談を重ねる中でお互いを理解し、考え方に共感できるかどうかを判断します。当社では必ず5回程、面談を行います。例えば、「この人と三日三晩話ができそうか」といった視点で候補者の方と向き合います。

アトラエはそれぞれの価値観を共有しながら業務を行っていますので、今いるメンバーと良好にコミュニケーションが取れるかどうかも重要です。仲間を尊重でき、かつ自分の意見も言える情熱があり、会社のビジョンを心の底から理解していると感じたら、その方は仲間だと確信します。

それから、自分たちでいうのもなんですが、ナチュラルに人からモテる人物であるか、という側面も見ていますね。

―モテるかどうか? なかなかハードルが高そうですが。

顔が良いとかそういうことではなくて。その人の周りには自然と人が集まるとか、ちょっと抜けているけど憎めないな、とか。人間として魅力があるかどうかを見ています。能力は後々いくらでも磨けますが、その人の根本にある人となりや考え方はなかなか変えることは難しいですよね。アトラエの中でお互いに活き活きと働ける人物であるかどうか、ということを話し合いの中で探っています。

駅の天井からぶら下がっている

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
オフィス内にはバーが設けられており、従業員の息抜きの場として活用される。

―日本でもエンゲージメントの重要性が謳われている中で、今後の事業展開やグローバル戦略について考えていることはありますか。

「Wevox」は現在日本語と英語以外の言語対応も取り入れ、幅広くグローバル化を目指して動いています。既に海外の拠点で活用されているという実績もあります。

さらなる海外展開を進めるにあたり、三井住友銀行さまと合弁会社を設立するなど、パートナーシップを活かすような形でもご縁がつながっています。

大手企業とタッグを組むことで、大規模に事業展開できる体制を整えつつ、アトラエ独自のカルチャーも大切にしていく方針です。5年後、10年後には軽く今の10倍は超えられるような事業規模を目指しながら理想の組織を貫いていきたいと思っています。

―最後に、アトラエが目指す今後の方針についてお教えください。

「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョンを掲げていますので、エンゲージメントを高めながらパフォーマンスが出続けるしくみを常にアップデートし、世界中に響き渡るような事業や組織へ成長していくことを目標としています。

また、ビジネスを面白がり、仲間と一緒に熱中しながら組織をつくり上げているという側面を、お客様や株主、社会に対して理解してもらう取り組みも行っていく予定です。

HPに全社員のプロフィールを掲載しているのも、その取り組みのひとつです。

ビジネス上の利益率だけではなく「この人たちなら信頼できるな」と思っていただくために、多くの人々に「アトラエらしさ」を発信していけたら良いと考えています。

アトラエと関わることで、お互いにとって良い取り組みができることを前提に、世の中にとって価値のあるものを提供できる組織であり続けたいと思っています。

―画期的な取り組みやアトラエらしさについて、たくさんお話しいただきありがとうございました!

取材を終えて

オフィス内に設置されたバーでは、従業員のみなさんがコーヒーやお茶を片手に笑顔交じりで雑談しており、そのアットホームな空気感にとても魅了されました。

満員電車に乗るストレスを軽減するため、会社から徒歩圏内の住宅に住める取り組みを行っていたり、従業員の子どもたちが自由にオフィスで過ごせるといった素敵な環境に「私もアトラエで働きたい!」という願望が湧き上がるほど。

人間ならではの感覚を尊重することが経営において大切である、という風潮が社会に根付き始めていることは喜ばしいことだと思います。

「世界中の人々を魅了する会社を創る」べく、日々進化し続けているアトラエの活動に今後も注目していきたいです。

従業員エンゲージメントに詳しく知りたいかたは、こちらの記事もおすすめです!:従業員エンゲージメントの鍵を握るeNPS—企業成長を加速する新しい評価軸

取材・執筆:椎橋萌美

編集:神谷周作

おすすめ記事

Recommend

戻る

Shere on SNS